はさみ

「宝石箱」に入っていたもので使いにくかったものの筆頭は、はさみだった。

日本の刃物の考え方は、西洋のものに比べると実用性においては劣るかもしれないが、その鋭さにおいては ひけをとらないと言われている。

父は大工道具をかなり揃えていたので比較的切れる刃物が家のなかにあった。母も洋裁のために布地を切るはさみを特別に持っていて紙を切るためには使わせてくれなかった。

そんなことで刃物の切れ味の大切さは幼児体験として分かっていたのかもしれない。

その当時は知らなかったが、西町スクールに送られてきたはさみは 「学校用はさみ」(school scissors)の一種で、先端が丸くなっているスタイルのものだった。

刃を子供にj度いいよう、ほどよく紙が切れるように材質を選んであるものだった。後にニュ ーョークで友人の了供と遊んでいたら久し振りにこのはさみと出会った。

いまだに同じ格好をしたものが学校では使われているらしい。なにか安心した。

とにかく文房具の入った箱は僕にとっては宝の箱であった。この荷物の中には、主に小学校で使われたものが入っていたのではなかったかと思う。1940年代から50年代にかけてのアメリカの文房具の基礎知識、アメリカの若者の持っているのと同じ幼児体験のチャンスを僕に与えてくれた。後にアメリカで生活することになって、 コメディアンのジョークを聴くとき、ウディ・アレンの映画を見るとき、寮でみんなでだべるときに、友だちとの間に共通語があるのが嬉しかった。

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