鉛筆は文字文化を発明した人類の傑作文房具だ

鉛筆というのは単純な筆記具のわりには手間をかけて作られている。手元に鉛筆があったらよく見てほしい。

どれもがまずまっすぐできていることに気付くだろう。

プラスチックなどのように型に流し込んで作られたものではなく、素材はすべて生の木なのにである。縦に二つに分かれた木の間に芯をはさんで接着する。

ナイフで削るならともかく、鉛筆削りの出現後は芯が中心にセットされていないと芯がうまく出ない。

それが理由かどうかわからないが、最近の鉛筆は精度の面でも大変向上した。

もうひとつ感心させられるのは一本ずはくおつ美しく塗装され、さらに箔押しまでされていることだ。

そして塗装はすべて厚塗りされている。削る便から考えると木は軟らかいほうがよいので、外側を硬い塗装で保護しているのだ。

高精度を追求しながらも、鉛筆は天然の木の感覚から決して離れない。最後までは使えないのに、端から端まで芯が入っている不合理も決して改善されない。

なぜかと考えてみたりもするが、心の中では簡単に許してしまっている。文字文化を作り出した人類の傑作文房具は鉛筆ではないだろうか。

鉛筆の原形はレッドホルダーである。芯を出すために、それを覆っている木ごと削る発想が最初からあったわけではない。

今日使われているレッドホルダーは鉛筆が進化したもののように見えるが、実は先祖帰りしたものと考えた方がいい。

もちろん芯そのものをくわえるチャックの部分の安定性や精度が大幅に向上したことは強調しなければならない。

それにも増してレツドホルダーが普及しえた大きな理由は芯が折れにくくなったことだろう。

芯を加工する技術は飛躍的に向上したと言える。レツドホルダーは芯を自由に出し入れできるので、製図などのように芯の先を特別な形に削る必要がある場合には便利だ。

芯の先をヘラ型に削って、カリグラフィーのまねをしてみるのもおもしろい。

太字を好む人にはシャープペンシルよりもレッドホルダー愛好者が多い。

鉛筆やレッドホルダーがたどり着いた技術的利点を全部自分のものにしてしまっているのがシャープペンシルだと言える。

強度を増した芯は細い芯の開発を可能にしたし、芯をくわえるチャックについては前に書いたとおりである。あとは芯の送り出しの機構の改良がシャープペンシルの重要な使命となった。

かつては軸を回転させることにより芯を出すものが多かったが、今はノック式が主流だ。

サイドノック式や軸の横に付いているレバーを前ヘスライドさせて芯を出すものなどがあるが基本的な構造は変わらない。

注目すべきアイデアとしては芯に加わる振動により小しずつ芯が出るタイプのものがある。

しかし読者もご存知のとおり、シャープペンの芯も最後までは使えず、ーセンチぐらいは無駄になる。

ここに鉛筆と同じ愛すべき不合理が残っているというべきだろうか。

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